「社会人でワーホリに行くのは、意味がないんじゃないか」
検索したあなたは、おそらく同期との差や、積み上げてきたキャリアを手放すことへの不安を抱えているはずです。実際、私も地方公務員を4年間勤めた後にワーホリへ出発する直前、同じ不安で何度も夜眠れなくなりました。「意味がない」という感覚の正体は、多くの場合「機会費用を計算していないこと」にあります。
給与や退職金、昇進といった中身を数字にしないまま、「なんとなく怖い」という感覚だけで判断しているのです。本記事では、私が実際にワーホリに出た際の機会費用を、給与や退職金、昇進まで数字化して振り返ります。帰国から6年以上経った今、同期との差がどうなったのか、転職市場でブランクはどう評価されたのかもお伝えします。
「意味があるかないか」を、機会費用を把握したうえで納得して判断するための材料にしてください。
※本記事の機会費用は、私個人が公務員を退職した当時の記憶に基づく概算であり、実際の金額を保証するものではありません。給与や退職金、年金の扱いは勤務先の規定や雇用形態によって異なります。正確な試算はご自身の勤務先や年金事務所等でご確認ください。
「社会人 ワーホリ 意味ない」と感じる、不安の正体

「意味がない」と感じる不安の正体について、下記の3点を解説します。
- 学生と社会人のワーホリの違い
- 「同期に置いていかれる」という不安
- 不安の正体は「計算していないこと」
学生と社会人のワーホリの違い
学生と社会人のワーホリでは、失うものの大きさが違います。学生は、ワーホリに行かなかったとしても翌年また学生です。就職活動のタイミングをずらせば済む話で、キャリアという意味では「失うもの」がほとんどありません。一方、社会人はすでに積み上げてきたキャリアがあります。
私の場合、地方公務員として4年間、教育委員会に配属され、主事として働いていました。役職が上がったわけではなく、いわば平社員のままでしたが、4年間かけて業務を覚え、周囲との信頼関係を築いてきたのです。年功序列の組織の中で少しずつ「年次」を積み重ねていました。
退職するということは、4年間で積み上げてきた評価や人間関係、年功序列のレールを手放すことを意味します。「ワーホリに行く」という同じ行動でも、社会人にとっては「今あるものを手放す」行為です。違いを整理しないまま「意味があるかないか」を考えても、答えは出ません。
自分が何を手放そうとしているのかを、正確に把握することが出発点です。
「同期に置いていかれる」という不安

「同期に置いていかれる」という不安は、多くの場合、中身を伴わないまま頭の中で膨らんでいきます。私自身、退職を決める前の数週間、夜になると不安に襲われていました。同期の顔を思い浮かべては、「自分だけ違う道を選んでいいのか」と考えるのです。
ある日、実際に何が「置いていかれる」ことなのかを、紙に書き出してみたことがあります。
- 主査への昇格年次
- 賞与の査定
- 手当や役職に伴う裁量権
- 住宅ローンの審査
不安の中身は「なんとなく取り残される怖さ」ではなく、いくつかの制度や仕組みだったことに気づきました。輪郭のなかった不安に、初めて名前がついた瞬間です。正体がわかれば、次にやるべきことも見えてきます。
不安の正体は「計算していないこと」
退職を決める前の私が感じていた不安は、突き詰めると「計算していないこと」への不安でした。何をどれだけ失うのかがわからないまま、「なんとなく怖い」という感覚だけが先に立っていたのです。人は、正体のわからないものほど大きく感じます。
真っ暗な部屋を歩くのが怖いのと同じで、電気をつけて中身が見えれば、対処のしようがあるとわかるものです。逆に言えば、数字にしてしまえば、不安は「検討できるもの」に変わります。給与にしても昇進にしても、実際には計算できる範囲のことがほとんどです。もちろん、転職や異動のように、予測しきれない変数も存在します。
ですが、大まかな輪郭をつかむだけでも、判断の質は変わります。漠然とした不安を数字に変える作業は、決断の後悔を減らすための確実な方法です。
機会費用を計算してみる【私の場合】

実際に私が手放したものについて、下記の3点で整理します。
- 手放した給与や賞与の総額
- 昇進や昇給タイミングの遅れをどう見るか
- 退職金や年金、社会保険のブランク
手放した給与や賞与の総額
退職時の私の給与は、額面年収で300万円台前半、賞与は年2回でそれぞれ30万円ほど、手取りは月18万円くらいでした。特別高くも低くもない、普通の地方公務員の給与水準だったと思います。単純に2年分として計算すると、額面で600万円台前半の給与を手放した計算です。
実際にはワーホリ中にファームなどで得た収入もあるため、金額がまるごと消えたわけではありません。ただ、ワーホリ渡航中は原則として日本での収入がなくなります。「もらえなかった給与」だけでなく、「生活費として使った貯金」も差し引いて考える必要があるでしょう。私自身、メルボルンで所持金が10ドルまで減った経験があります。
ワーホリの2年間は「収入がゼロだった」どころか、貯金を取り崩した期間です。手元に残っていたはずの貯金と、本来得られていたはずの給与。両方を足し合わせて初めて、機会費用の全体像が見えてきます。
※上記の給与水準は、私個人の2018年当時の記憶に基づく概算です。手当や税、社会保険料の控除など、細かい内訳までは正確に再現していません。
昇進や昇給タイミングの遅れをどう見るか

地方公務員に限らず、多くの日本の組織は年功序列型の昇進制度を残しています。私が勤めていた自治体では、主事から次の役職である主査に上がるのは、おおむね入庁7〜8年目が目安です。4年目で退職した私は、主査昇格のタイミングにすら達していませんでした。
私の場合、「同期に置いていかれる」という不安の中身は、誰かの昇進情報に基づくものではありません。実際に聞いたのは、ある先輩が主事から主査になったという1件だけです。しかし、「同期は少しずつ上がっていく」という想像だけで、不安は膨らみました。しかし、不安の正体は、「計算していないこと」に由来するものだったのです。
退職は、年功序列というレールから外れることを意味します。レールに戻る前提がない以上、「何年遅れるか」という発想自体が、実はあまり意味を持たないのかもしれません。
退職金や年金、社会保険のブランク
給与や昇進以上に見落としがちなのが、退職金や年金、社会保険まわりのコストです。私が4年間の勤務で実際に受け取った退職金は、約40万円でした。自己都合退職かつ勤続年数が短かったため、決して大きな金額ではありません。もし2年多く勤めていれば、勤続年数に応じて退職金は増えていたでしょう。
退職金以外にも、影響があった項目を整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 厚生年金から国民年金への切り替え | 保険料は全額自己負担となる。将来の受給額にも影響する(厚生年金の加入期間が短くなる分、将来の年金額が減少) |
| 健康保険の切り替え手続き | 「任意継続」または「国民健康保険」のいずれかに加入する必要がある |
| 退職金算定に使われる勤続年数のリセット | 自己都合退職の場合、支給率自体が低くなるケースが多い |
上記は金額として目に見えにくいため、退職を決める段階では見落としがちです。私自身、退職の手続きを進める中で初めて知った項目もありました。給与や昇進、退職金を並べてみると、数字にできる範囲だけでも決して小さくない機会費用だったのです。
ただ、実際に帰国して私が向き合うことになったのは、数字よりも、同期という「顔の見える比較対象」の存在でした。
※年金や退職金、保険の扱いは、勤務先の規定や雇用形態、当時の制度によって異なります。正確な内容は、ご自身の勤務先の人事担当や年金事務所にご確認ください。
同期との差は、どう埋まったか

帰国してから今までの実感を、下記の2点でお伝えします。
- 帰国直後に感じた「置いていかれた」実感
- 5〜6年経った今、差はどうなったか
帰国直後に感じた「置いていかれた」実感
2019年10月に帰国してすぐ、私は「同期はどうしているだろう」と考える瞬間が何度もありました。しかし、誰が主査になったといった話を聞いたわけではありません。聞いたのは、ある先輩が主事から主査に昇格したという1件だけです。あとは「年功序列の組織だから、みんな少しずつ上がっているはずだ」という想像でした。
想像だけで、胸がざわいたのを覚えています。「もし公務員を続けていたら、今頃自分も今ごろ」という考えが、帰国後しばらくの間、何度か頭をよぎりました。帰国後の就職活動で、2年間のブランクについて面接で聞かれたことも、胸のざわつきに拍車をかけました。
ブランクという言葉自体が、まるで2年間を「空白」と呼ばれているようで、正直こたえた時期もあります。今振り返ると、確認してもいない想像に対する焦りでした。しかし同時に、「所持金10ドルになっても動き続けた自分」という感覚が、精神的な支えにもなっていたのです。
5〜6年経った今、差はどうなったか
帰国から6年以上が経ち、現在は塾の教室長として働いています。正直に言えば、経済的な差は完全には埋まっていません。同世代で公務員や大手企業に勤め続けている人たちと年収を比べれば、今も差はあります。しかし、「差が埋まるかどうか」だけを判断基準にしていたら、6年間の意味を見誤っていたはずです。
塾講師から始まり、福祉職を経て、今は教室長として人材育成や保護者対応、経営に近い業務まで任されています。所持金10ドルの経験を含め、ゼロから信頼を積み直してきた6年間は、年収の数字だけでは測れない蓄積です。差は埋まっていませんが、帰国直後の自分よりは、今の方がずっと納得して仕事に向き合えているのも事実です。
転職市場で、ブランクはどう評価されるのか

転職市場での評価について、下記の2点をお伝えします。
- 面接で聞かれたこと、評価されたポイント
- 「ブランク」はどこまでハンデになるのか
面接で聞かれたこと、評価されたポイント
帰国直後の転職活動について振り返ります。面接では、ほぼ毎回「なぜ公務員を辞めたのか」「ワーホリ中に何をしていたのか」を聞かれました。所持金が10ドルまで減った経験を正直に話したとき、「逆境でも諦めない姿勢」として評価してもらえたことがあります。塾講師のアルバイトは帰国から1か月、福祉職の正社員は3か月で決まりました。
面接官の反応が変わった瞬間や、想定外の質問にどう切り返したか。回答例といったポイントを知りたい人は、下記の記事をご覧ください。
ワーホリ後に就職できないは本当か【公務員・ブランク2年でも採用】
「ブランク」はどこまでハンデになるのか
「ブランクがどこまでハンデになるか」は、業界や職種、年齢、応募先の採用方針によって差があります。新卒採用のように年次を重視する組織もあれば、経験やエピソードを重視する中途採用の現場もあります。私が経験した範囲では、「ブランク中に何を考え、どう動いたか」を説明できるかどうかが、評価に影響しました。
同じ「2年間のブランク」でも、語れるエピソードがあるかどうかで、面接官の反応は違います。ただし、あくまで私の実体験に基づく印象であり、すべての業界や企業に当てはまるとは限りません。ブランクが不利に働く場面が存在するのも事実です。転職市場での評価を過度に楽観視せず、自分の状況に合わせて情報を集めましょう。
ワーホリが「意味がある」と言えるかどうか

機会費用を踏まえたうえでの判断基準について、下記の3点を解説します。
- 機会費用を「投資」として見る視点
- 判断基準は人によって違うのが結論
- 迷っているなら、数字化をすすめる理由
機会費用を「投資」として見る視点
手放したものを数字で整理してきましたが、機会費用は「損失」としてだけ捉える必要はありません。積み上げてきた年次を手放した一方で、私は「所持金10ドルになっても、動けば出口が見える」という感覚を手に入れました。「出口が見える」という感覚は、帰国後の就職活動でも、今の教室長としての仕事でも、判断の土台になっています。
お金に換算できない資産と、お金に換算できる損失。2つを同じ天秤に乗せて比べることに、そもそも無理があるのかもしれません。しかしあえて言うなら、私にとってワーホリは「投資」だったと考えています。リターンが数字で見えませんが、リスクを取った分だけ、のちの選択に効いてきた実感があります。
塾の教室長として保護者や生徒と向き合うときも、感覚に助けられている場面は少なくありません。
判断基準は人によって違うのが結論

「結局、ワーホリに行った方がいいのか」を知りたい人もいると思います。正直に言うと、私は答えを持っていません。機会費用を見て、「ワーホリ行く価値がある」と感じる人もいれば、「機会費用を払ってまで行く必要はない」と判断する人もいて当然です。どちらが正しいということはなく、何を優先するかという価値観の違いにすぎません。
私から伝えられるのは、機会費用を把握したうえで、価値観に照らして判断してほしいということだけです。材料をそろえたうえで選んだ方が、どちらを選んでも納得感は変わってくるはずです。
迷っているなら、数字化をすすめる理由
迷っている段階なら、自分の機会費用を数字にしてみることをおすすめします。私が振り返って「先にやっておけばよかった」と思うステップは、下記のとおりです。
- 年収や賞与、退職金の見込みを書き出す
- 勤務先の年功序列制度を確認する
- 年金や保険の切り替えによる影響を調べる
- 留学エージェントに生活費の目安を確認する
すべてを完璧に計算する必要はありません。大まかな数字が見えるだけで、漠然とした不安は、検討できる材料に変わります。紙に書き出すだけでも構わないので、まずは手を動かしてみてください。留学エージェントの詳細については、下記の記事をご覧ください。
ワーホリにエージェントはいらない?使った私と使わなかった私の結論
まとめ|機会費用を知ってから決めても遅くない

「社会人がワーホリに行くのは意味ない」と感じる不安の多くは、機会費用を計算していないことから生まれます。私自身、給与や退職金というコストを手放し、同期との差は今も完全には埋まっていません。しかし、ワーホリの2年間で得た感覚は、今の仕事の判断基準として生き続けています。行くかどうかの答えは人それぞれです。
ただ、迷っているなら、まず自分の機会費用を数字にしてみることから始めてみてください。ワーホリに伴う私の実体験について知りたい人は、下記の記事をご覧ください。
ワーホリはやめとけは本当か【所持金10ドルになった私が正直に答える】
若いうちにしかできないことを29歳でやった話【公務員→ワーホリ実録】
ワーホリ後に就職できないは本当か【公務員・ブランク2年でも採用】
※本記事の機会費用は、私個人が公務員を退職した当時の記憶に基づく概算であり、実際の金額を保証するものではありません。給与や退職金、年金の扱いは勤務先の規定や雇用形態によって異なります。正確な試算はご自身の勤務先や年金事務所等でご確認ください。


コメント