「タックスリターン、申告しなくても大丈夫かな」
帰国後、私も同じことを考えていました。AUでは還付がほぼゼロと聞いていたので、「どうせ戻ってこないなら申告しなくていいだろう」と放置したのです。ところが帰国後に調べてわかったのは、タックスリターン未申告の記録が残り続けるという事実でした。
最大A$1,650のペナルティが課される可能性があると知ったとき、ヒヤッとしたものです。本記事では、申告しないと何が起きるのか、「バレない」が通じない理由、申告が必要なケースについて解説します。未申告に気づいた場合の対処法についても触れています。
タックスリターンを申請していない人は、ぜひ最後までご覧ください。
※本記事は私個人の2018〜2019年当時の体験と執筆時点のリサーチをもとに書いています。税制や申請方法は変更の可能性があるため、最新情報はATO・IRD公式サイトでご確認ください。
タックスリターンを申告しないとどうなるのか

申告しなかった場合に実際に何が起きるのかについて、下記の3点を解説します。
- 申告しない=違反になるケース
- オーストラリア|ペナルティは最大A$1,650
- ニュージーランド|放置しないこと
申告しない=違反になるケース
タックスリターンは「還付がもらえるかどうか」という話だけではありません。オーストラリアでは、収入があった人には原則として申告義務が発生します。ワーホリ中「税金は引かれているから、自分では何もしなくていいはずだ」と思い込んでしまう人が多いです。
しかし、AUでは自分で申告するのが基本です。給料から税金が引かれているかどうかに関係なく、収入があれば申告義務が生じます。ニュージーランドでは2019年以降、IRDによる自動処理システムが導入されました。銀行口座をIRDに登録していれば、何もしなくても還付金が振り込まれるケースがほとんどです。
ただし、税年度の途中で帰国した場合は自動処理が完了しないため、IRDに連絡する必要があります。
オーストラリア|ペナルティは最大A$1,650

ATOは申告義務がある人が期限内に申告しなかった場合、ペナルティを課します。ペナルティの金額は申告の遅延期間によって異なり、最大で$1,650に達する場合があるので注意が必要です。ATOのペナルティの仕組みは下記のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 加算単位 | 28日遅れるごとに1ユニット(現在1ユニット=A$330)が加算 |
| 上限 | 5ユニット(140日超)でA$1,650に到達 |
| 免除・軽減 | ATOの裁量により、事情によっては免除・軽減される場合あり |
「数か月放置してから申告しよう」と考えていると、ペナルティが積み上がってしまいます。現在はATOと移民局が情報を照合する仕組みです。ビザの取得記録や入出国記録をもとに、申告義務があるにもかかわらず申告していないケースが発覚する場合があります。
帰国後に「オーストラリアにいたのに申告がない」という記録が残り続けると、将来の再渡航やビザ申請に影響する可能性もゼロではありません。
※ペナルティの金額・適用条件はATOの裁量や個別の状況によって異なります。最新情報はATO公式サイトでご確認ください。
ニュージーランド|放置しないこと
NZでは2019年以降の自動処理により、IRDに銀行口座を登録していれば自動的に還付金が振り込まれます。自動化のおかげで、多くのワーホリにとってNZのタックスリターンでは「何もしなくていい」状態です。ただし、NZの自動処理は「税年度が終了した後」に行われます。
税年度は4月1日〜翌年3月31日であるため、10月に帰国した場合、当年度の4月〜10月分は自動処理されません。帰国前にIRDへ「NZを離れる旨」を伝えなかった場合、翌年3月31日まで処理されません。処理が遅れると、還付金の受け取りが遅れます。
口座を解約して帰国した場合、Wiseなどの海外送金サービスで代替口座を用意しておく必要があります。「自動だから放置でいい」という考えは、帰国のタイミングによっては通用しません。
「バレないだろう」が通じない理由

「バレないだろう」が通じない理由について下記の3点を解説します。
- TFN・IRD番号で収入は記録されている
- 移民局とATOは情報を照合している
- 帰国後でも連絡が届く
TFN・IRD番号で収入は記録されている
オーストラリアではTFN、ニュージーランドではIRD番号が、すべての給与情報と紐づいています。雇用主はATOまたはIRDへ給与情報をリアルタイムで報告する義務があるので注意してください。誰が、いつ、どの雇用主のもとでいくら稼いだかの記録は、税務局のシステムに蓄積され続けます。
| 項目 | オーストラリア(ATO) | ニュージーランド(IRD) |
|---|---|---|
| 個人番号 | TFN(Tax File Number) | IRD番号 |
| 給与報告の仕組み | Single Touch Payroll(STP) | 雇用主によるPAYEリアルタイム報告 |
| 義務化時期 | 全雇用主へ拡大:2019年7月 | 常時義務 |
| 記録の蓄積先 | myGov / ATO online | myIR |
TFNを取得した時点で、ATOのシステムに納税者としての記録が作られ、申告記録が蓄積されます。「帰国したのでもう関係ない」と考えていても、ATOのシステム上では申告が完了していない記録が残り続けるのです。TFNを取得して働いた事実は、申告の有無に関わらず記録されます。
移民局とATOは情報を照合している

現在、オーストラリアでは移民局とATOが情報を照合する仕組みが存在します。ビザの取得記録や入出国記録をもとに、タックスリターンを行っていたかを検知します。申告を怠った場合、ATOにペナルティの免除を申請可能です。しかし、「知らなかった」は合理的な理由として認められにくいです。
未申告の記録がATOに残ったまま、再渡航など行う際に、何らかの影響が出る可能性はゼロではありません。「バレないだろう」という判断は、長い目で見るとリスクをはらんでいます。
※照合の結果として取られる行政上の対応は、個別の事情やATOの裁量によって異なります。最新情報はATO公式サイトでご確認ください。
帰国後でも連絡が届く
ATOやIRDからの連絡は、登録しているメールアドレスや住所宛に届きます。帰国後に住所変更をしていれば、連絡は届きません。しかし「連絡が届かなかった=申告義務がなかった」ということにはなりません。帰国後に見落としやすい連絡経路は、下記のとおりです。
| 国 | 連絡経路 | 届く内容 |
|---|---|---|
| オーストラリア | myGovアカウント内のATOメッセージ | 追加納税の通知・申告催促など |
| ニュージーランド | myIRアカウント内のメッセージ(IRDはセキュリティ上の理由からメール連絡を避けており、myIRが主要な連絡手段) | 還付金の通知・申告に関する連絡など |
帰国後にタックスリターンを放置していると、知らないうちにリスクが積み上がります。帰国前後に、ATOまたはIRDのアカウントにログインして状況を確認しましょう。
私がAUのタックスリターンを申告しなかった理由

実際に申告しなかった私自身の体験について、下記の3点をお伝えします。
- 「どうせ還付ゼロ」という思い込み
- 申告義務を知らなかったこと
- 帰国後に調べてわかったこと
「どうせ還付ゼロ」と思っていた
私がオーストラリアに滞在していたのは2018年10月からです。AUではワーホリビザに15%の一律課税が適用されるため、申告しても還付がほぼゼロになるケースがほとんどでした。「AUは還付がないなら申告する意味がないだろう」と判断して、放置したのです。
当時は「還付がゼロなら申告しなくていい」というものでしたが、間違った判断でした。タックスリターンは、収入を正しく申告するという義務でもあります。「戻ってくるお金がないから不要」という判断は、申告義務の存在を無視した誤った解釈でした。渡航前に税務手続きについての知識を知っておくべきだったと、今では思います。
申告義務の存在を知らなかった

当時はタックスリターンを、「払いすぎた税金を取り戻す手続き」という理解しか持っていませんでした。AUには申告不要の制度がありましたが、条件を満たしているかどうかを確認することすらしなかったのです。日本では会社が年末調整をしてくれるため、基本的に確定申告をする必要がありません。
「税金の手続きは会社がやってくれる」という感覚が抜けきれていなかったのだと思います。AUでは自分で申告するのが前提という仕組みの違いを、渡航前にきちんと理解していなかったのです。タックスリターンについての正確な知識は、渡航前に知っておく必要があります。
帰国後に調べてわかったこと
帰国後に改めて調べたとき、AUでも申告義務が原則として生じるという事実を知りました。申告しなかった場合、調べてわかったことは、下記のとおりです。
| 項目 | オーストラリア(ATO) | ニュージーランド(IRD) |
|---|---|---|
| 申告義務の有無 | 原則あり(non-lodgement条件を満たす場合のみ不要) | 2019年以降は自動処理が基本 |
| 未申告のペナルティ | 最大A$1,650(1年分) | 自動処理対象外の場合は遅延リスクあり |
| 未申告記録の残存 | 申告年度が「overdue」としてATOに無期限で記録される | myIRに処理未完了の記録が残る |
| ATOによる遡及 | 未申告の場合、遡及年数に法定上限なし | ― |
追加納税が発生しないケースについては、ATOは1回限りの未申告に対してペナルティを課さないことがあります。ただし「課されないことがある」は「絶対に課されない」を意味しません。申告義務を果たしていないという記録がATOに残り続けることは、将来的なリスクになり得ます。
「私も放置している」と気づいた場合は、ATOの状況を確認しましょう。
※ペナルティの適用・免除はATOの裁量と個別の事情によって異なります。最新情報はATO公式サイトでご確認ください。
申告が必要なケース・不要なケース【AU・NZ別まとめ】

全員が申告しなければならないわけではありません。自分がどちらに当てはまるかを確認してください。
- オーストラリア|申告が必要かを判断する3つの条件
- オーストラリア|当てはまる人は申告が必要
- ニュージーランド|帰国時は自分から連絡が必要
オーストラリア|申告が必要かを判断する3つの条件
AUで申告が不要になるのは、限られた条件を満たした場合に限られます。ATO公式のガイドによると、下記の条件をすべて満たす場合に申告不要になるケースが多いとされています。
- 15%の一律課税が正しく源泉徴収されており、他に収入がない
- 控除を申請しない
ワーホリビザの場合は居住者向けの非課税枠が適用されないため、「申告不要かどうか」の判断は複雑です。申告不要かどうかを確認したい場合は、ATOの公式ツール「Do I need to lodge a tax return?」を使うのをおすすめします。自己判断で「不要だろう」と結論づけるのは危険です。
条件の解釈を誤ったまま放置すると、申告義務を果たしていないことになります。
※申告要否の判断基準はATOの規定変更により変わる場合があります。ATO公式サイトまたは公認会計士にてご確認ください。
オーストラリア|当てはまる人は申告が必要

下記のいずれかに当てはまる場合は、申告義務が生じると考えてください。
- 複数の雇用主のもとで働いた
- ABNを使って収入を得た
- 銀行預金に利息がついた
- 仕事関連の経費などの控除を申請したい
- 15%以外の税率で源泉徴収されていた
複数の職場で働いていた場合は、それぞれの収入を合算したうえで正しい税額を申告する必要があります。歩合制や現金払いで働いていたケースも申告義務の対象です。
ニュージーランド|帰国時は自分から連絡が必要
NZでは2019年以降、IRDの自動処理システムにより、多くのワーホリは何もしなくても還付金が受け取れる状態になりました。税年度末(3月31日)後の5〜7月頃にIRDが自動計算を行い、IRDに銀行口座が登録されていれば還付金が自動的に振り込まれます。
ただし、年度途中で帰国する場合は注意が必要です。4月1日〜翌3月31日の税年度が終わる前に帰国した場合、当年度分の自動処理が行われないままになります。帰国する場合は、myIRからIRDへ「NZを離れる」旨のメッセージを送り、早期アセスメントを依頼しましょう。帰国前の連絡を怠ると、翌年3月31日まで還付処理がされません。
口座を解約して帰国した場合は、Wiseの口座を振込先として登録すると、帰国後でも還付金を受け取れます。Wiseの活用方法については、下記の記事をご覧ください。
Wiseを知らなかった私の後悔【銀行送金で3〜7営業日と言われて諦めた話】
今からでも遅くない|未申告に気づいたときの対処法

申告を忘れていた場合でも、下記の方法で対処できます。
- オーストラリア|過去分を遡って申告できる
- ニュージーランド|帰国後でもmyIRから手続きできる
- 手続きが不安なら代行サービスもある
オーストラリア|過去分を遡って申告できる
ATOは過去の未申告分についても申告を受け付けています。myGovアカウントとATOの紐づけが有効であれば、myTaxにログインして2016年以降の年度の申告書をオンラインで提出可能です。ペナルティの免除を申請できる場合があるため、早めに申告するのをおすすめします。
ATOの公式ツール「Do I need to lodge a tax return?」にアクセスして、申告義務があるかどうかを確認しましょう。申告義務がある場合は、myGovにログインしてmyTaxから申告を進めます。給与明細を紛失していても、myTaxにログインすると収入データの確認が可能です。手続きの手順については、下記の記事をご覧ください。
ワーホリのタックスリターン完全ガイド【オーストラリア・NZ】
ニュージーランド|帰国後でもmyIRから手続きできる

NZのIRDは、現在の税年度から過去4年分の還付申請を受け付けています。帰国後であってもmyIRにログインすれば、未処理の税年度分について申請が可能です。myIRのアカウントにログインし、「Secure mail」からメッセージを送ると、過去の分の手続きを依頼できます。
帰国後に口座を解約していた場合は、Wiseの口座をIRDへの振込先として登録すると、還付金を受け取れます。NZの銀行口座の作り方とWiseの活用方法については、下記の記事で詳しく解説しています。
オーストラリア・NZの銀行口座おすすめ【到着7日以内に2カ国で開設した実体験ガイド】
手続きが不安なら代行サービスもある
英語サイトでの手続きに不安がある場合は、日本語対応のタックスリターン代行サービスを利用しましょう。代行サービスでは、必要情報を日本語で伝えるだけで申告を代行してもらえます。代行サービスの利用を検討する前に、自分の状況と照らし合わせてみてください。
| 状況 | 目安 |
|---|---|
| AUワーホリビザで収入が1か所のみ | 自分で申告できる可能性が高い(還付もほぼゼロのため代行手数料が割高になりやすい) |
| 複数の雇用主・ABN収入がある | 代行サービスへの相談を検討する価値あり |
| 英語でのやりとりが難しい | 代行サービスが安心 |
| NZで還付額が高額($1,000超) | 代行手数料と還付額を比較したうえで判断 |
代行サービスを利用する際は、ATOに登録された正規のRegistered Tax Agentであることを確認してください。登録状況はTPBのPublic Registerで確認できます。費用と還付額のバランスを考えたうえで、代行サービスを利用するかを判断しましょう。
※代行サービスの内容・手数料は事業者によって異なります。本記事は特定の代行業者を推薦・保証するものではありません。
まとめ:タックスリターンは「面倒」では済まされない

タックスリターンを申告しないことは、「還付がゼロだから損しない」という話ではありません。申告義務を果たさなかった場合、ATOには未申告の記録が残り続けます。ペナルティは最大$1,650で、移民局との情報照合によって帰国後に発覚するケースも存在します。私自身もAUでの申告を放置したひとりです。
帰国後に調べてヒヤッとした経験から、「知らなかった」では通用しないことを実感しました。NZではIRDの自動処理があるため比較的シンプルですが、帰国前の連絡を怠ると還付金の受け取りが遅れます。申告義務を果たしているかどうかを確認することが、最初のステップです。
ATOの「Do I need to lodge a tax return?」ツールで確認するか、myGovにログインして状況を把握してください。申告の手順については、下記の記事で詳しく解説しています。
ワーホリのタックスリターン完全ガイド【オーストラリア・NZ】
申告に必要な公式サイトは、下記のとおりです。
- オーストラリア税務局(ATO):https://www.ato.gov.au/
- ニュージーランド税務局(IRD):https://www.ird.govt.nz/
※本記事は私個人の2018〜2019年当時の体験と執筆時点のリサーチに基づいています。税制・申請方法は変更の可能性があるため、最新情報は上記の公式サイトでご確認ください。本記事の情報に基づいて行った行動の結果について、筆者および当サイトは責任を負いかねます。


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